月に一度行う部内ミーティングでビーサクから退職の報告があった。
みんなに衝撃が走った。
俺も一瞬意味が分からなかった。温厚で堅実派のビーサクは俺より1つ若いが同年代。嫁さんに子供が2人の立派な家族持ち。転職にはかなりの決断と勇気が必要なはずだ。
どこに就職が決まったのだろう?いつから就職活動していたんだろう?
そんなことが頭を巡ったがとりあえず退職時期はまだ先なので社内的には伏せることになった。
色々聞きたいことがあったが、うちのオフィスはかなりオープンな感じで死角が全くないのでこっそり聞くこともできない。疑問を胸に抱いたままミーティングは終わった。
俺の中で注意警報がなり、俺もこのまま会社に居ていいのだろうかと考え始めた。
新しい親会社の転職サイトの口コミは悪く、評価は業界平均よりかなり下だ。夏に買収が決まったのに未だに俺たちの将来も待遇も不透明なままだし、印象も良くはない。
親会社のシステム部は東京に集約されているのも気になる。
2年後の事業精算まで待つと俺は45歳。若くはない。
その時に会社が糞だと気づいても遅いかもしれない。俺もビーサクのように一刻も早く出るべきではないのか?
そんな気持ちにどんどん傾いてきた。
ノースキルの43歳
俺はシステム部に属しているがプログラミングが出来るわけでない。いわゆるコードが書けない社内SE?というやつだ。
最初に情報システム畑に入ったころから中小企業であるため、まともな教育も受けたことはなく、場当たり的に仕事をこなしてきた、なんちゃって社内SEである。
また30代を無職引きこもりで過ごしたのもありマネージメント経験もない。
ないない尽くしである。
現在と同じ水準で転職をするにはスペック的に厳しいだろう。
資格があれば仕事ができるわけではないが、何も無いよりはましである。とにかく資格を取ろう。
そして、転職できる能力を身に着けていこう。
ふと前を歩くビーサクがガリガリなことに気が付いた。ビーサクは大柄でがっしりした体格だったが、スーツがスカスカになるぐらいに痩せている。
家族持ちでもあるし、やはり転職は悩んだのだろう。
しかも、彼はすこぶるお人よしなので会社に対する恩義も感じていて、仲間を裏切ってしまったと感じてるのかもしれない。
そういう中で転職という決断をしたビーサクを俺は凄いと思った。やっぱり大黒柱は違うな。
俺はこの先どうなるかもわからずに結婚もできるかわからない。本当にお先が見えなくなった。
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